小豆澤　恵子

　日本でメキシコ行きの準備をしていたときは、とても貴重で良い経験ができるという期待とたった２ヶ月という短い期間にわずかなスペイン語能力で何が出来るだろうという不安だった。一緒に働くメキシコ人ボランティアともうまくやっていけるか心配だった。

　Leonに到着した私たちを迎えに来てくれたのはtioとcasaで生活している女の子２人だった。Tioは気さくな人で、子ども達も去年の日本人ボランティアの話をしてくれたり一緒に生活している子ども達の話をしてくれたりした。初日から彼らのスペイン語を全て理解することは出来なかったけれど、彼らの言おうとしていることを聞きたい、理解したいという姿勢をみせると彼らもそれに応えてくれた。

  Leonについたときはまだ学校もcasaも夏休み中だったので、学校が始まるまでの約３週間はボランティア全員が１つのcasaに集まっていたけれど、学校が始まり仕事が本格的に始まると急に不安が込み上げてきた。日本人は自分１人になり、日本人同士でtios達が言っていたことを確認しあうこともできない。休みが終わりたくさんの子ども達がcasaに戻ってきて、担当する子どもの数が増え、スペイン語で彼らの宿題を手伝ったり注意したりもしなければならない。本当に自分にできるのだろうか。ましてや相手は複雑な家庭に生まれ虐待を受けた子、親に捨てられた子、みんな様々な問題を抱えている。仕事が始まる前日とても不安になった。

　けれどもそんな不安は必要なかった。みんなとても元気で明るくて、食器を洗ったり部屋の掃除をしたりととてもしっかりしていた。私がスペイン語を理解できないと簡単な単語でもう一度説明してくれたりしてくれたりもした。自由時間になると「遊んで、遊んで！」と寄ってきて一緒にブランコで遊んだり、日本の遊びを教えてあげたりもした。私は子ども達が遊んでいるときにとても楽しそうな顔をしてくれるのが何よりもうれしかった。掃除などの仕事は子ども達が担当していたためその間私はやることがなく、正直日本人ボランティアは必要なのだろうかと思っていた。けれど、ボランティアの仕事は必ずしも施設の掃除や食事の用意だけではない。子ども達が求めているのはそれらの仕事を手伝ってくれる人ではなく彼らを愛してくれる人だった。私は子ども達に大好きだという気持ちを示し、子ども達も同じ気持ちを手紙や絵、スキンシップなどで表してくれた。

　２ヶ月があっという間に過ぎ、Leonを出発する日がきた。荷物をまとめ部屋を出ると子ども達がいた。「今までありがとう」と言って手紙をくれる子、黙り込んだまま抱きついて離れない子、「日本に一緒に連れて行って！」という子といろいろだった。２ヶ月という期間はあまりにも短くて、できることならずっと子ども達と一緒にいたかった。泣きながらtiosや子ども達に別れを告げた。タクシーに乗った後も涙が止まらなかった。帰国して約１ヶ月、子ども達のいない生活は物足りない感じがする。

　この２ヶ月は私に大きな影響を与えてくれた。ただ大学を卒業して就職するのではなく、自分にできることをできるときにやりたいと思った。たとえそれが大きな目立ったことではなくても、誰かが喜んでくれるならやる価値があるのだと思う。これからもボランティア活動に積極的に参加しようと思った。

 

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