齋藤　友貴

　今、子供たちの写真を見返すたびに彼女たちと過ごした大切な日々が思い出されるとともに、みんなは今何をしているのだろう、そろそろ夕食の時間かな、などと考えてしまう。

　私がいた施設は女の子ばかり２８人が暮らしている施設であった。今年は私たち日本人ボランティアだけが派遣されるということを派遣される２日前に知ったとき、２ヶ月間私たちだけできちんとやっていけるのか、ととても不安だった。しかし、そんな不安や緊張もすぐになくなるくらい子供たちは人懐こく、元気であった。

　施設での仕事は特に決まったことはなく、その時々でマドレに頼まれた仕事や子供たちがそれぞれ割り当てられた仕事を手伝うこと、そして子供たちと走り回って遊ぶことだった。派遣されたばかりのころは何かしなければという気持ちが先行してしまい、何でもやってあげることがよいことなのではないかと思っていたが、逆にマドレに子供たちが怒られてしまったりしていてボランティアとはそういうことをすることだけではないのだと思った。

この施設では大きい子がよく小さいこの面倒をみていた。また、子供たちは何でも自分で出来るよう教育されていて、３,４歳の子達ですら自分が履いていた靴下を手洗いしていた。私がこの子達くらいの年の時にこんなことをしていただろうかと非常に驚いたし、日本で何もせずにのん気に生活していた自分を恥ずかしく思った。

　私が子供たちとの生活を通して最も感じたことは、愛情の大切さと人は互いに助け合って生きているのだということである。ここで生活している子供たちが貧困やその他いろいろな理由で親とは一緒に生活できないで寂しいはずなのにいつも笑っていられるのはきっと、マドレやこの施設を支援してくれる人々から多くの愛情を注がれているからであろう。だから私もメキシコにいる間、私が今まで私の周りの人々から与えられてきたように子供たちにも愛情をいっぱい注いで接していこうと心がけた。子供たちはよく抱きついてきたので、言葉以上に子供たちとスキンシップをとること、抱きしめてあげることが大切なことなのだと思った。そして私は自分がそうしていた以上にたくさんの愛情を子供たちからもらったと思う。仲良しだった子供が違う施設へ移ることを知って寂しくて泣いてしまったとき、子供たちは抱きしめてくれたり、笑わせてくれたりと元気をくれた。また私が体調を崩してしまったとき、「ゆきが早く直るように神様にお祈りしたよ」ということを言っていたと他のボランティアの子から聞いたときには、嬉しくて涙がこぼれた。私は頼りないボランティアだったのかもしれない。しかし、この経験から人は互いに助け合っていることを実感することが出来た。そして日本での合宿でボランティアについて考えたこと、学んだことを思い出した。ボランティアとは誰かのために何かをしてあげるというものではなく、ボランティアを通じてみんなと自分たちの持っているものを互いに分かち合うこと、共有することなのだと学んだ。最初はピンとこなかったけれど、私はメキシコでの生活を通して子供たちから学んだことの多さや一緒に共有した時間の大切さからそのことを実感できたように思う。子供たちと毎日一緒に話したり、遊んだりして過ごした時間や異なる考え方、生活環境を共有することが出来たことは本当によかったと思う。

　そして、今回の経験を通して、私が以前に抱いていたボランティア像やものだけの援助では本当は何も満たされないのではないかと考えるようになった。私が２ヶ月弱の経験で考えたこと、一部ではあるけれどメキシコの子供たちと接して感じたこと、メキシコという国の現状について実際に感じたことをもっと多くの人と共有し、知ってもらいたいと思った。

この報告書だけでは語りつくせないほどの様々な貴重な体験を今回のこのメキシコボランティアですることが出来た。それは２ヶ月をダラダラと日本で過ごしていたのでは絶対に経験することの出来なかったことばかりである。その中には楽しいこと、悲しいこと、つらいこともたくさんあった。どれも大切な思い出である。

こんな素敵な経験をさせてくださった先生、先輩、両親、一緒に行った仲間たちに感謝したい。そして、この経験をこれからの生活に生かしていきたい。

 

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